院長コラム
「重心バランス」から筋機能を見る視点の重要性〜心身の健康、スポーツや武道への新しい視点~
重心バランスから筋機能を見る視点〜心身の健康、スポーツや武道の実践、選手生命延長への、新しい視点〜
1身体を支えているのは筋肉です。重力に対して「姿勢を維持し、重心を保ち、立って動くことを可能にしているのは骨格筋の力です」(レントゲンで映る骨の機能役割ではありません)
2重力下で垂直に立ち上がっている以上、身体には常に重心を安定させる必要があり、筋肉・骨格筋が,この重心を保つ役割を担っています。
これは呼吸の様に無意識下で行われ、私たちはこの重心バランスに気づくことがありません。
ゆえにこの重心バランスの重要性に無頓着なので注意が要ります。
3重心バランスは、筋肉のつり合いで保たれています。負荷での筋肉トレーニングとは一線を画す発想です。
4椎間板ヘルニアで、椎間板という軟骨が押し潰れたり、膝や股関節の軟骨がすり減って変形してくるのは、重心バランスの崩れが関係し、この歪が不適切な負荷を関節軟骨に掛けてしまうからです。
症例写真 重心バランスを見ている
正座して前に手を付いたときに重心バランスの崩れとして背骨が歪む。姿勢や重心を維持する筋肉のつり合いを見ている。前傾に傾けた方が重心バランスの崩れは明らかになる。
調整後の変化は筋に気のつり合いが正され、重心バランスが適切化したことを示す。重心バランスが崩れた状態で日常を生活している。重心バランスは無意識の筋機能なので自覚されにくい。
ほとんどの人が写真を撮るまでここまで歪んでいるとは気づいていない。
この様な重心バランスを筋機能から見るというのは科学〈医学)ではまだ研究されていません。もちろん構造の面から、筋機能以外の物理的な考察はされていると思います。
筋機能から見るというのは、筋機能における張力の不釣り合いが、運動神経系の制御機能から、どのように起きて、もし修正される場合には、それがどのように正されるのかが、運動神経の制御反応において説明できなければなりません。
身整式は、この運動神経系の反射のメカニズムを解明し、徒手療法に応用し、リハビリ体操や、各種スポーツ・武道等にも応用しています。
それが「抗重力・重心制御作用」の筋機能ということになります。
ゆえに「体の歪むメカニズム」「整復反応のメカニズム」という仕組みを、筋機能の運動神経系の反射レベルで 整備してあるのです。
運動生理学でも知られていることですが、手足の骨格筋には交差性反射の存在が確認されています。
これは歩く時手足を交差させて歩くことで効率よく重心バランスをとるために予め備わった反射性の動きであり、重心バランスをとるための主要な反射系であると言えます。
運動生理学的にはハムストリング筋と大腿四頭筋という大きな筋において筋電図からこの反射の存在を明らかにしました。
身整式は徒手療法・整備研究の過程で、手足を動かす多くの筋肉に、この交差性反射の存在を認め、徒手療法の効率化にお応用しました。
その結果、写真に撮ってみて確認できるレベルまで、手法を整備しました。
体幹には脊柱を中心とした体幹軸を、
深部起立筋や体幹インナーマッスルが膨らむことでその軸を保っています。
この膨らむことで脊柱の柱を絶たせているという発想が医学にはまだありません。
深部起立筋や体幹インナーマッスルは毛細血管が密になっていますが、これは毛細血管の血流圧という水圧を利用して背骨を立たせる力を創出しているのです。
血流圧という水圧で立つのか、という疑問が浮かぶ方は、男性の生殖器を思い浮かべてみてください。あれも充血という水圧で立つのです。こんな身近にヒントがあるのですが、医学は当然この事実を知っていますが、インナーマッスルの毛細血管が密になっていることが構造上重要だということにどういうわけか結びつかなかったのです。
この体幹軸を歪ませるのは内臓の重さのアンバランスと、この影響による表層筋の癖です。収縮が得意な表層筋は癖がつきやすいのです。
体幹深部筋群の膨らむ力とは血流圧による水圧を応用した動力で、これは合気道の呼吸力が理解できると自然にその仕組みを実感できる様になります。
私どもも、一応、合気道のそれなりに高段者です。
この深部筋の膨張力は自然な作用で無意識で自覚できません。表層筋の力を最小限にすることで効率的に表れ、意図的な力ではありません。
「力を抜いたほうが力が出る」とよくスポーツ選手が言う言葉の裏には無自覚な体の動きを練習で培った、何かの感じでそうなるという体験が潜みます。
つまり無意識レベルの筋機能にはそれなりの力が潜んでいるといえるのです。
身整式の筋機能は合気道の理合いを説明できる筋機能とも言えます。
無意識レベルの筋機能を主動させることが合気道における呼吸力です。
重心バランスを無視して体のパフォーマンスは向上させられない、
表層筋の力に騙されると自分で自分の身体を壊してしまうこともあるのです。
正しいフォームを覚えないと怪我をするということは大投手の江夏さんも言っておられます。負荷での筋肉トレーニングでフォームを崩すという、一流アスリートの話しは少なくありません。
王貞治氏の一本足打法も、合気道の工夫を応用しており、深部筋主導で立つ練習をされていたと言えます。王選手の練習のアドバイスをされた合気道10段の藤平光一先生は、もちろん野球のことはわかりませんので、何を見ていたかというと、僅かな表層筋の力みを探すことです。その力を抜くように工夫するのは荒川コーチと王さん自身に練習の工夫です。
合気道は相手の関節の力みを読み取って技をかけることもあります。表層筋の力みとは隙になるのです。これは投手の配球の組み立てにも関係しますが、スポーツにはこのような学びが随所にあり武道修練はこのような工夫ばかりです。サッカーやバスケ、当たり合いポジションの奪い合い、フェイントのタイミングは表層筋の隙でもあります。
座相撲〜合気座技呼吸法
実際は左の方は力を入れているつもりで重心が上がっちゃって押しています。右の方は重心を下げて相手の隙を伺っています。
相手が浮き上がった隙をついて投げます
この様に身整式の筋機能とは重心バランスの本質を探究し、筋機能の原理を見極めていった筋機能の概念です。
マニアックな話ばかりではなく、
今までの医学の筋機能の見方とどのように違うのか? 分りやすく見て行きましょう。
医学では筋機能は「起始・停止」を見て収縮方向を確認するという、パーツごとの見方であり、この部分的な力を測定することには長けています。
しかしここには重心という重要な重力下で行動する動くための要素は見落とされています。
また、身体が重力に抗って立つために骨格筋をどのように使っているのか、これを考察した人はいません。世の中の半分は男性なのに自分の持ち物の特徴から重要な水圧の作用に目がいかなかったから、考えてみようという動機にならなかったのだと思います。
抗重力作用には筋肉の膨らむ作用が不可欠です。そしてこの抗重力作用の膨らむ力は、無意識下の筋機能で、そこに注意が向かないのです、しかしスポーツを通して武道修練を通して、体の作用を見て行ったとき、様々な体の動きを追って見ていくために不可欠な身体の仕組みが見えてきます。
少なくとも体を動かすとき部分的な感覚ではなく全体的なバランスに注意して体を使うはずです。上手くなろうという意欲をもってスポーツの動きを修練するなら、必ずそうなってきます。この感覚の中で筋肉を見て行くと、起始停止だけ覚えても、身体が立ち上がることを説明できないぞ、という重大な疑問にぶち当たります。
この疑問が解ける時が来るかもしれないという一心で合気道なるものを通じて筋機能を探究してきました。
身整式は抗重力・重心制御作用によって筋機能を全体の統合的なものとして見る仕組みを確立しています。
これによって徒手療法が整備され、リハビリ体操も内側の膨らむ筋を主動させる動作を工夫できたのです。






